お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
◇
「何かあったワケ?」
「え……」
「隣で辛気臭いオーラ出してる」
「あ……、ごめん」
現在、放課後。
巨大なハチに刺されず無事だった私は、とある人と帰路を共にしていた。
その時に「何かあったか」と聞かれるワケだけど……。
聞いてきた本人は、一人だけホットドリンクを飲み、ホッと息をついている。
現在、十二月はじめ。
吐いた息が白くなる季節。時おり吹き付ける風は凍てつき、ますます鼻先を赤くさせる。
そんな中。
隣で「あったけ~」と感嘆の声を漏らす人。
私の彼氏――
畑 成希(はた しげき)。
大学二年生で、私より二つ上。
「あ、来月は試験があるから、なかなか会えないの。ごめんね」
「なんで?」
「え、なんでって……」
私は高校三年の受験生。
来月――一月に控えた大きな試験が、どれほど重要か。二年前に経験したこの人なら、それが分かってもいいようなものを。