お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
ザザッ
『陽の丘〇〇丁目でひったくり、マル被*が転倒しケガ。
マル害*は確保済み。が、協力者と思われる人物が”自転車で逃走した”との目撃情報あり。現場に散乱物が多数。PC*応援ねがう』
「行きますよ、一葉」
「はい!」
守人さんと柴さんは、二人三脚でもしているかのような揃い具合で、交番を出る準備を始める。
「〇〇丁だと、カー*なら十分ですね」
「証拠が無くならないよう、一刻も早く現場保存しないといけません。急ぎましょう」
「了解――」
「……っ」
顔つきが変わった守人さんを見て、あまりの真剣な表情に――ドクンと。心臓が大きく跳ねる。
キリッと上がった眉に、強い眼差しの瞳。背筋はいつも以上にピンと伸び、纏う雰囲気もピリついているのが分かる。
いつもニコニコしていた守人さんの面影は、今は全くない。
(マル被・まるひ…被害者のこと)
(マル害・まるがい…加害者のこと)
(PC、カー…パトカーのこと。人によって様々な言い方がある)