お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「試験があっても、フツーに会えるだろ」

「でも、将来が決まるかもしれない試験だし……」

「……」



すると、成希は黙った。

何か言うのかと思ったけど、何も言わない。ただ黙って、私の隣を歩いている。


それが――怖い。



「や、やっぱり、試験があっても、時間はとれる……よね。はは」

「……」

「成希に会ったら、試験を頑張れそうな気がするし!」



すると、成希の顔にニッコリと笑みが浮かぶ。そして私の肩に、ぐるんと乱暴に腕を回した。



「仕方ねーなぁ。どうしてもって言うなら、会ってやるよ」

「はは、ありがとう……」



噓八百な事を言った結果が、自分の首を絞める。

だけど、これでいいんだ。



「まったく冬音は、俺がいないとダメなんだからな~」

「そ、そうだよね」



この時、脳裏によぎったのは――昼間のハチ。

あのハチは、確かに死んだはずなのに。



チクッ



私の深くを、鋭い針で刺した気がした。
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