小説
何でってて言われても…
私の前に1人の少女が立っていた。
大きな水溜まりの様な、薄い海の上に立っている。何て言えば皆んなに伝わるのか分からないけれど。とりあえず水の上にいる。この事は伝わって欲しい。
「私は青年を待ってるの。
それだけ言って少女は私に背中を見せて歩き出した。走ったらすぐに追いついた。
隣に並んで歩幅を合わせながら顔を覗き込む。
あ。よく見るとこの子可愛いかも。
ちがう。今はそんな事考えてる場合じゃない。
「貴女は続きを読んで。
何の事だ?
私の思考を読み取ったのか、少女はそれを指差した。
机の上に置いてある1冊の文庫。
「…これを?
座ってもいいものか許可を得る前に、背もたれがつる植物で出来てる1人用の椅子にもたれ掛かった。
「うん。
手にとってパラパラと捲ると1枚の千円札が挟まったページに辿り着いた。
「…ここから?
「うん。青年の代わりに。
本当に意味が分からなかったから挟まっていた千円札はポケットに締まっておこう。この少女に攻めてもの嫌がらせをしておきたい。青年とやらの物ならば後で謝って置こう。ごめん。一応今も心の中で謝っておく。

< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop