小説
少女の言う風を待つのは退屈ではなかった。そもそも退屈という言葉すらこの世界にあるのかも、合っているのかも分からないほど、時間の間感覚がなかった。なくなっていた。

「暇でしょ?

「いや。別に。

今更そんなことは考えていない。僕の人生は大体暇で、退屈で、ありきたりで、つまらない。その程度の物だったから。

「はい。

自傷的な事を考えていた僕に、少女は何かを渡してくるような声をかけてくる。
何故だかいつもその声に反応していたように僕は今だけ背が高い少女を見上げてみる。

すると少女の手には1冊の文庫本があった。

「何これ?

気づけば何も考えずについそれを僕は自然に受け取ってしまった。
タイトルがない。

「暇だと思うから読んでていいよ。面白くないから。

意味が分からなかった。
理解に苦しんだ訳ではなく、こんな世界で一体誰がこの本を面白くないと決めたのだろうか。作者か?それとも読者?あるいはどこかの知らない偉い人なのだろうか。それに、少女はこの本を読んだのだろうか。

「なんでこれを僕に?

そう言いうと少女は、何も言わずに何も無い場所を見始めた。
本当になんなんだよ。

< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop