小説
目的地のアナウンスが箱全体に響いた。
「降ろしてください」のボタンを押すとクリスマスツリーに飾るLED以上にキラキラと光出した後、アライグマが渋い声で「はい」と鳴いた。この歳になっても、いや。なったからこそ?いくつ歳を重ねてもアライグマは可愛いく見えるらしい。勉強になった。
重い扉を両手を使って開けると1人の美少女がうろちょろと犯罪者並みの素早さで動きまわっていた。
「何か探しているの?
「んー?少しねー
そう言いまた座席の近くを行ったり来たりし、1列前の座席をまた行ったり来たりしている。
入ってきた扉の前で棒立ちしていた僕と目が合ったはずなのに、美少女は何も言わずに何かを探している様だった。なかなか声をかけて貰えなかったので、僕の方から声をかけたのだ。女性に自ら声をかけた事など1度しかないのに、しかもこんな美少女に、だ。待ちの姿勢だから恋人が出来ないのか。
「映画館に落とし物って、よくあるよな。
美女と同じ姿勢に、腰を少し曲さげて地面を見ながら失くしてしまった何かを見つける為に、長時間歩き回る事にした。

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