小説
お客様に申し上げます。現在、校内は目的地を探して彷徨っております。危ないですので黄色い線までお下がりください。なお、別れ道や引き返し、線路変更などの責任は持ちませんので予めご了承ください。
それでは残りの宇宙をお楽しみくださいませ。
透き通る声をスピーカーが無理矢理響かせる教室内。懐かしいな、小学生の頃は給食や、下校時に放送委員がラジオ番組の真似事をしていたっけ。文庫本は見つかった。最前列の真ん中の席、その下に落ちていたのを君が見つけてくれたのだった。
辺り一面にあった鏡の壁は無くなっていて、代わりに窓ガラスの向こうには辺り一面の黒と時々光る石っころ、グラウンドには観覧車や滑り台、ジャングルジム、メリーゴーランドや少し大人向けなホテルがある。
「下向いてたら気づかないよね。
「そうだね。
誰が悪い訳では無いのだけれど、お互いに言い訳をして、自分達は悪くないのだと主張しあった。
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