小説
その瞬間だけはこれまでに無いくらい自分にぴったりだと、しっくりときていた。深く、深く落ちていく。これが落ちるって感覚。
少女に肩を押されて時、背中から地面にしていた広い水溜まりの様な海の様な中に沈んでいる。
水面に上がろうとしても上手く体を動かせない。息はできてる。ただゆっくり落ちている。
それなのにキラキラと光るコインの様なものが僕とは逆の方へ浮かび上がっているのが視界に入った。
あぁ。確かそんなの合ったな。何処だっけ?左のポケットだったか。
「三秋。無理矢理渡してきやがって。律儀な奴だったな。
落ち込んでいる様に見えたからケーキ奢ってあげようと思ったのに返す返すって、うるさかったな。
もしかしたら一緒お目にかかれない僕の優しさだったかも知れないのに、忘れてたんだな。

この中で僕は今までの偽りの僕を知っていく

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