一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
なんとなく決まりが悪く、思わず顔を背ける。
「あ……うん。大丈夫」
そう答えた由依の元に、持っていたキャリーケースをその場に置いたまま樹は近寄った。
「何かあった?」
頭の上からは心配そうな樹の声が聞こえる。
「とにかく……話すから」
ぽつりと話す由依に、樹は黙って頷いていた。
奥の部屋にあるコンパクトなローテーブルに向かい合わせで座る。樹の顔をまともに見ることができず、膝に乗せた両手をギュッと握り締めていた。
部屋の中には時を刻む秒針の音だけが響いている。樹は由依が話し出すのを静かに待っていた。
意を決して顔を上げると、緊張した面持ちの樹が目に入る。深呼吸を一つ行うと口を開いた。
「たっちゃん。あのね……。私、子どもが……できたの」
さすがにその内容は予想できなかったようで、樹は「……は?」とだけ口にする。
「驚かせてごめん。予定日は五月の終わり。今はちょっと悪阻が酷くなってきて……」
そこまで由依が言うと、樹はわかりやすく頭を抱えた。
「ちょ……っと、待ってくれ。今なんつった? 俺の聞き間違いか?」
そう言う樹は、今まで見たこともないくらい混乱している様子だった。
「あ……うん。大丈夫」
そう答えた由依の元に、持っていたキャリーケースをその場に置いたまま樹は近寄った。
「何かあった?」
頭の上からは心配そうな樹の声が聞こえる。
「とにかく……話すから」
ぽつりと話す由依に、樹は黙って頷いていた。
奥の部屋にあるコンパクトなローテーブルに向かい合わせで座る。樹の顔をまともに見ることができず、膝に乗せた両手をギュッと握り締めていた。
部屋の中には時を刻む秒針の音だけが響いている。樹は由依が話し出すのを静かに待っていた。
意を決して顔を上げると、緊張した面持ちの樹が目に入る。深呼吸を一つ行うと口を開いた。
「たっちゃん。あのね……。私、子どもが……できたの」
さすがにその内容は予想できなかったようで、樹は「……は?」とだけ口にする。
「驚かせてごめん。予定日は五月の終わり。今はちょっと悪阻が酷くなってきて……」
そこまで由依が言うと、樹はわかりやすく頭を抱えた。
「ちょ……っと、待ってくれ。今なんつった? 俺の聞き間違いか?」
そう言う樹は、今まで見たこともないくらい混乱している様子だった。