一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 中学は地元の私立中高一貫校で、周りはみんな自分が峰永会の関係者だと知っている。親に言われでもしたのか変に擦り寄ろうとするもの、逆によく知りもしないのに敵意を向けてくるもの。誰にも心を開けず、友人と呼べる相手すらできなかった。
 そんな話を母にもできず、そのままエスカレーター式に高校に上がるのだと諦めていた。
 その心の内を話したのは美礼にだけ。美礼はその頃都内に住んでいて、頻繁に会うことはなかったが、時々電話で近況を報告し合っていた。

『じゃあ、都内の高校を受験してみたら?』

 そう言われて、目から鱗が落ちたような気がした。どうしてそれを思いつかなかったのだろうかと。もしかしたら、地元でないと駄目だと思い込んでいたのは自分のほうだったのかも知れない。もちろん通学は遠くなるが、離れているほうが家にいる時間が短くて済む。
 祖父には最初、難色を示されたが、都内でもトップクラスの偏差値の高校ならと認められ、より一層勉強に励んだ。
 そして無事合格し、入学した高校で友人と呼べる人ができた。学校は思っていたよりずっと自由な校風で、友人たちと過ごす時間が何よりも楽しかった。やっと美礼以外に色々なことを話せる相手ができた。
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