一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
　あっという間に初日は終わり、定時に園を出た。
　居残って製作したり、書類を作ったりすることは全くなく、時間が来たら遠慮なく帰ってと同僚たちは言ってくれた。それに松永先生も、保育士が働きやすい園にしたいとずっと言っていて、それを実行しているようだ。

(書店、覗いてみようかな？)

　家の近所に書店はない。最近はたまに出かけたときに寄るか、通販頼りだ。久しぶりの書店、それもかなり大きな店舗に、ワクワクしながら入った。
　キョロキョロしながら進むと、奥に児童書のコーナーがあった。絵本もかなり充実していて、カラフルな表紙を眺めるだけで心が踊った。

(あっ、これ。SNSで見かけたやつだ)

　話題になった絵本は目立つところに置かれているが、昔から読まれ続けている絵本もたくさん揃っている。迎えもあるからあまり長時間見るわけにはいかないが、つい時間を忘れてしまいそうになる。前から読んでみたいと思っていた絵本を手に取り、レジに向かおうとしたところで、ある絵本が目に入った。
　勇ましいヤギが三匹、橋を渡ろうとしているところが描かれた表紙。それは大智が、子どものころ好きだったと言っていた絵本だ。
　
「灯希も……好きになってくれたらいいな……」

　表紙を撫でながら呟くと、その絵本も一緒にレジへ足を運んだ。

　そして、書店を出て駅へ向かうと、そのまま真っ直ぐ灯希の待つ保育園に向かった。
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