一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 しばらく見ていると、場面は保育園に切り替わった。
 松永先生が話している向こうに自分の姿が見えた。横顔だが思っていたよりはっきり映っている。自分の姿を画面越しに見るなんて初めてだ。ただでさえ恥ずかしいのに、読み聞かせし始めた自分の声もはっきり入っていて余計に恥ずしくなる。

「結構はっきり映ってるな。録画しといてよかった。これは永久保存版だな」

 樹が茶化すように笑う。頰が熱くなるのを感じながら「わぁ……恥ずかしい」と顔を覆った。

「ま、俺は由依が働いてる姿見られて嬉しいけどな。眞央も喜びそうだ」

 その感慨深げな顔が、父の顔と重なって見える。

(お父さんも……同じこと言いそう)

 そんなことを思いながら、またテレビに視線を移した。


 翌週、聞くところによるとテレビを見た人から少し反響があったようだ。特に、このビル内の会社に勤めているが、今現在育児休業を取っていて開園を知らない人から。
 松永先生も、『テレビ見たよ』と昔の同僚から連絡があったらしいが、自分の身近に見た人がいなかったのか、そんな連絡もなかった。

「お先に失礼します」

 時間通りに園を出る。
 今日は樹が灯希を迎えに行ってくれる。たまにゆっくりショッピングでもしてきたらどうかと、樹が気を利かせてくれたのだ。
 その言葉に甘え、真っ先に向かったのはビルの一階にある書店だった。
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