一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 カフェテリアは広々として明るい雰囲気だった。もう午後1時半近くで、ずいぶん人も減っているようだ。
 メニューは日替わりの和風か洋風のランチセットや、カレーライスや麺類など、すぐに出てくるものが多かった。

「ここにしようか」

 トレーを手に見晴らしの良さそうな窓際の席に向かうと、松永先生と向かい合って座った。
 周りでは垢抜けた服装の女性たちが食事をしていて、ジャージ姿の自分たちが浮く理由がよくわかった。
 松永先生はそれを気にする様子もなく手を合わせ箸を持った。自分も慌ててそれに続いた。
 しばらく食べ進めていると、後ろの席に女性が二人やってきた。制服なのか、同じようなネイビーのカーディガンに白いブラウスとネイビーのタイトスカートという出立ちだ。

「ちょっと聞いてよ!」

 由依の真後ろに座った女性が、座った途端に声を上げる。そう離れていないからか、はっきりとその声が耳に届いた。

「何よ、いったい」

 呆れたようなもう一人の女性の声がすると、後ろの女性は話し出した。

「まぁた、阿佐永先生に叱られちゃったのよぉ!」

 由依はピタリと箸を止めた。

(今……阿佐永先生って言った?)

 盗み聞きしているようで気が引けるが、会話は次々と耳に入ってくる。

「また? 阿佐永先生に今度は何やらかしたの」
「失礼だな。ちょっと頼まれてた判例探せなかっただけだよ。あの人、電話でマニアックな判例を探しといて、とか平気で言うんだよ? 顔はとてつもなく良いのにさ、笑顔の一つも見せないんだから! あの冷血弁護士!」
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