一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
その名前に反応し、反射的に顔を上げる。二メートルほど先に、腕を組んで歩く男女の姿があった。ダークグレーのスーツ姿の男性と、誰がどう見ても親密そうに寄り添っている綺麗な女性だ。
「えっ……」
二人の姿が目に飛び込んできた途端に声が漏れる。けれどそれ以上言葉は続かなかった。
(どう……して……)
あまりのことに、それしか浮かばない。さぁっと血の気が引いていくような気がして、立っているのもやっとだった。
突然立ち止まった自分の視線を感じたのか女性は振り向く。そして、みるみるうちに目を見開いた。
「瀬奈さん? 瀬奈さんじゃない!」
彼女がヒールを踵を鳴らしながら近寄ってくるその先で、彼はこちらを見て一瞬驚いた表情を見せる。けれどその整った顔が険しいものに変わったかと思うと、気まずそうに顔を逸らした。
(……もう、無かったことに……したいんだ……)
もしかしたら覚えてくれているかも知れないなんて、自分の思い上がりだったと思い知らされた。涙が出そうになる自分を現実に引き戻したのは、嬉しそうに自分の両手を取った彼女だった。
「1年ぶりくらい? 凄い偶然! 元気だった?」
「大迫さん。お久しぶりです……」
元々綺麗な人だと思っていたけれど、化粧気のない彼女しか知らない。今はきちんとメイクし長い髪もセットされ、上品なワンピースを着ている彼女は眩しいくらいに綺麗だった。
「えっ……」
二人の姿が目に飛び込んできた途端に声が漏れる。けれどそれ以上言葉は続かなかった。
(どう……して……)
あまりのことに、それしか浮かばない。さぁっと血の気が引いていくような気がして、立っているのもやっとだった。
突然立ち止まった自分の視線を感じたのか女性は振り向く。そして、みるみるうちに目を見開いた。
「瀬奈さん? 瀬奈さんじゃない!」
彼女がヒールを踵を鳴らしながら近寄ってくるその先で、彼はこちらを見て一瞬驚いた表情を見せる。けれどその整った顔が険しいものに変わったかと思うと、気まずそうに顔を逸らした。
(……もう、無かったことに……したいんだ……)
もしかしたら覚えてくれているかも知れないなんて、自分の思い上がりだったと思い知らされた。涙が出そうになる自分を現実に引き戻したのは、嬉しそうに自分の両手を取った彼女だった。
「1年ぶりくらい? 凄い偶然! 元気だった?」
「大迫さん。お久しぶりです……」
元々綺麗な人だと思っていたけれど、化粧気のない彼女しか知らない。今はきちんとメイクし長い髪もセットされ、上品なワンピースを着ている彼女は眩しいくらいに綺麗だった。