一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
確かめるように尋ねた言葉に「うん」と頷く。まだ呆然としたままの彼女は、また続けた。
「眼鏡……掛けてて、顔は全く見えなくて……。でも、口元が……似てるって……思ってたんです」
心が打ち震えるようだった。彼女があの頃の自分を知っていて、覚えてくれていたことに。
ゆったりと微笑みを浮かべて、彼女にまた語りかける
「見ず知らずの人に、君はいつも優しくて。微笑ましい気持ちで見てた。それからずっと、忘れることはできなかった」
彼女の瞳から、今度は静かに涙が溢れ落ちる。まだ信じられないと言いたげな表情で、じっと自分を見つめていた。
「二年前、すぐに気づいたよ。名前も知っていたし……」
「一度だけ……教科書を、拾ってくれましたよね」
「そう。名前を知れて嬉しかった。卒業後に同じ電車に乗っても会えなくて、もう二度と会うことはないと思ってた。でもまた会えて……」
そこで一呼吸置くと、背中に回していた腕を離し、感触を確かめるように髪を撫でる。
「運命ってものがあるんだって、そう思った。けれど、あとで後悔したよ。あのときこの話をしていたら……由依が去ることはなかったんじゃないかって」
由依は顔を歪め、ハラハラと涙を溢し続けた。
「ごめん……な……」
再び謝罪の言葉を紡ごうとする彼女に、首を振って答える。
「責めているわけじゃないんだ。それにそのとき思った。運命というものがあるのなら、それを信じようって。……もしまた会えたら、そのときは言おうって……」
「何、を……?」
とめどなく流れる涙をそのままに、彼女は尋ねた。
そしてその答えを、最大限の気持ちを込めて彼女に返した。
「君のことが……好きなんだ。もう、離したくないって」
「眼鏡……掛けてて、顔は全く見えなくて……。でも、口元が……似てるって……思ってたんです」
心が打ち震えるようだった。彼女があの頃の自分を知っていて、覚えてくれていたことに。
ゆったりと微笑みを浮かべて、彼女にまた語りかける
「見ず知らずの人に、君はいつも優しくて。微笑ましい気持ちで見てた。それからずっと、忘れることはできなかった」
彼女の瞳から、今度は静かに涙が溢れ落ちる。まだ信じられないと言いたげな表情で、じっと自分を見つめていた。
「二年前、すぐに気づいたよ。名前も知っていたし……」
「一度だけ……教科書を、拾ってくれましたよね」
「そう。名前を知れて嬉しかった。卒業後に同じ電車に乗っても会えなくて、もう二度と会うことはないと思ってた。でもまた会えて……」
そこで一呼吸置くと、背中に回していた腕を離し、感触を確かめるように髪を撫でる。
「運命ってものがあるんだって、そう思った。けれど、あとで後悔したよ。あのときこの話をしていたら……由依が去ることはなかったんじゃないかって」
由依は顔を歪め、ハラハラと涙を溢し続けた。
「ごめん……な……」
再び謝罪の言葉を紡ごうとする彼女に、首を振って答える。
「責めているわけじゃないんだ。それにそのとき思った。運命というものがあるのなら、それを信じようって。……もしまた会えたら、そのときは言おうって……」
「何、を……?」
とめどなく流れる涙をそのままに、彼女は尋ねた。
そしてその答えを、最大限の気持ちを込めて彼女に返した。
「君のことが……好きなんだ。もう、離したくないって」