一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「……結婚……」

 その意味がすぐに理解できず、ポカンとしてしまっていたのだろう。シュンとした大智に顔を覗き込まれた。

「やっぱり、今も結婚までは考えられない?」

 二年前に自分が言った言葉を覚えていたのか、大智はそう尋ねた。

「えっ、あのっ、そうじゃなくて。家族になるのと、結婚が結びついてなくて。……すみません」

 肩身の狭い思いをしながら謝ると、彼はホッとしたように息を吐いた。

「急かしたつもりじゃないんだ。でも早く由依の夫に、灯希の父親になりたくて。由依だって、心の準備がいるだろうに、ごめん」
「謝らないで下さい。そう思っていただけて嬉しいです。そう……ですね。私たち家族に、大智さんの妻に、なるんですよね」

 確かめるように言ってみる。まだ現実だと思えず、フワフワとした夢の中にいるようだ。

「……そうだね」

 自分の肩に回った手に力を込め、彼は微笑む。けれどまた、何か考えてから表情を曇らせた。

「できれば……近いうちに、一緒に住めたらと思うんだけど……。一つ問題があってね」
「美礼さんからもそんな話を聞いてます。詳しくは何も知りませんが」

 彼は苦笑いを浮かべると、その問題を自分に話して聞かせた。

「彼女は今まで同じようなことを繰り返しているらしい。厳重注意程度で終わっているんだけど、念のために行動には注意を払っているんだ。飽きっぽい性格みたいだから、早く飽きてくれればいいんだけど……」

 彼は疲れた様子で溜め息を一つ吐き続けた。

「周りにも協力してもらって、良い方法を考えるよ。こんなことで邪魔されたくないしね。それより……お願いがあるんだ」

 大智は、じっと話を聞いていた由依に視線を向ける。

「灯希に……会わせてもらえないだろうか?」
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