一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「……もちろん! 会ってください。灯希を、早くお父さんに会わせてあげたいです」

 彼が言い出さなくても、こちらからそう申し出るつもりだった。食いつくように言うと、彼はクスクスと笑いながら「ありがとう」と答えた。

「そういえば。今日はどうしているの?」
「今日は……家で見てもらってます。あの、さっき大智さんは私一人に苦労させてって言いましたけど、灯希を一緒に育ててくれた人たちがいるんです。血は繋がってませんが……私にとって、家族だって胸を張って言える人たちが」

 この二年、いや、それ以上前から陰になり日向になり見守ってくれた人。今日も、どうしても会っておきたい人がいるから灯希を見てもらえないかと頼むと、快く送り出してくれた。『ゆっくりして来いよ』そう言って。

「そうなんだね。じゃあ、その方たちにも挨拶しないと。で、どんな人? 知りたいな」

 樹も眞央も、彼を連れて帰ったら驚くだろう。でもずっと味方でいてくれた二人のことだ。きっと、喜んでくれるはず。
 優しいその顔を思い出しながら頷くと、これまでにあったことを話し始めた。
 
「――私にとって二人は、兄のような存在なんですけど、お父さんみたいで、お母さんみたいでもあるんです。凄く……大切な人たちです」

 二人を思うだけで心が温かくなる。そんな自分の話に、彼は真剣に耳を傾けていた。

「じゃあ、尚更早く挨拶しないとね。由依のご両親の代わりなんだから。もし可能なら……今からでも、いいかな?」

 まだ夕方と言うにも早い時期だ。突然連れて行ったら迷惑だろうかと考えるが、自分も早く二人に会わせたいと気がはやる。

「……はい。そうしましょう」

 ゆっくりとコクリと頷き、彼にそう返した。
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