一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
帰宅し、また少し荷物の整理をしていると、家のインターホンが鳴る。初めての来客は若木先生だ。エントランスの扉を開け、そろそろ着くだろうと、二人で玄関で待ち構えていた。
再びインターホンが鳴り、彼が扉を開けると、若木先生がニコニコしながら軽く手を上げていた。
「よっ! 大智、由依ちゃん。お邪魔して悪いな!」
いつも通りの飄々とした笑顔。掴みどころがなさそうだけど、彼が一番信用していて、いい人だ。
「とんでもない。ようこそ、若木先生」
「いらっしゃいませ、若木先生。何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていってください」
マンションの、広いとは言えない玄関先で挨拶を交わしていると、唐突に若木先生の後ろから声が聞こえた。
「若木さん! 後ろ詰まってますって。とりあえず進んでください」
「ん? ごめんごめん。美礼ちゃん」
若木先生は振り返り謝っている。そして自分たちは驚いていた。
「美礼?」
「美礼さん?」
一緒に来るとは聞いていなかった。それにこの二人が、こんなに親しいことも。美礼は若木先生の背後からヒョコッと顔を覗かせ苦笑いを浮かべていた。
「ごめんね、突然。若木さんが、二人の幸せオーラに一人では太刀打ちできないから、どーしても着いてきてくれって」
「俺、そこまで言ってないけど?」
笑いながら答える若木先生の背中を押すようにして、美礼が玄関に入ってくる。それから、下げていた紙袋を差し出した。
「これ、差し入れ。払ったのは若木さんだから。とりあえず食べよ?」
気圧されながら大智はそれを受け取り、「ありがとうございます」と若木先生にお礼を述べた。
「さすが美礼ちゃん。強ぇ」
若木先生がポツリと口にすると、美礼は振り返る。
「何か言いました?」
「いーや、何でも」
そのやりとりに、思わず大智と顔を見合わせる。彼も二人の様子に驚いているようだ。リビングに進みながら、彼に小声で尋ねてみた。
「美礼さんと若木先生、仲が良いんですね」
「みたいだ。僕は……知らなかったけど」
彼はまだ、呆然とした様子だった。
「――では、大智と由依ちゃんの結婚を祝して、乾杯!」
上機嫌で発声した若木先生の手にあるのは、お茶の入ったグラス。車だから飲めないそうで、今アルコールを手にしているのは美礼だけだ。そのお茶のグラス三つと、缶ビール一つを重ね合わせた。
「「ありがとうございます」」
自分たちの声が重なると、向かいに座る若木先生と美礼は笑顔を返してくれていた。
再びインターホンが鳴り、彼が扉を開けると、若木先生がニコニコしながら軽く手を上げていた。
「よっ! 大智、由依ちゃん。お邪魔して悪いな!」
いつも通りの飄々とした笑顔。掴みどころがなさそうだけど、彼が一番信用していて、いい人だ。
「とんでもない。ようこそ、若木先生」
「いらっしゃいませ、若木先生。何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていってください」
マンションの、広いとは言えない玄関先で挨拶を交わしていると、唐突に若木先生の後ろから声が聞こえた。
「若木さん! 後ろ詰まってますって。とりあえず進んでください」
「ん? ごめんごめん。美礼ちゃん」
若木先生は振り返り謝っている。そして自分たちは驚いていた。
「美礼?」
「美礼さん?」
一緒に来るとは聞いていなかった。それにこの二人が、こんなに親しいことも。美礼は若木先生の背後からヒョコッと顔を覗かせ苦笑いを浮かべていた。
「ごめんね、突然。若木さんが、二人の幸せオーラに一人では太刀打ちできないから、どーしても着いてきてくれって」
「俺、そこまで言ってないけど?」
笑いながら答える若木先生の背中を押すようにして、美礼が玄関に入ってくる。それから、下げていた紙袋を差し出した。
「これ、差し入れ。払ったのは若木さんだから。とりあえず食べよ?」
気圧されながら大智はそれを受け取り、「ありがとうございます」と若木先生にお礼を述べた。
「さすが美礼ちゃん。強ぇ」
若木先生がポツリと口にすると、美礼は振り返る。
「何か言いました?」
「いーや、何でも」
そのやりとりに、思わず大智と顔を見合わせる。彼も二人の様子に驚いているようだ。リビングに進みながら、彼に小声で尋ねてみた。
「美礼さんと若木先生、仲が良いんですね」
「みたいだ。僕は……知らなかったけど」
彼はまだ、呆然とした様子だった。
「――では、大智と由依ちゃんの結婚を祝して、乾杯!」
上機嫌で発声した若木先生の手にあるのは、お茶の入ったグラス。車だから飲めないそうで、今アルコールを手にしているのは美礼だけだ。そのお茶のグラス三つと、缶ビール一つを重ね合わせた。
「「ありがとうございます」」
自分たちの声が重なると、向かいに座る若木先生と美礼は笑顔を返してくれていた。