一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「けっ、結婚だなんて、私も考えられないです! けど……」

 日本では結婚している夫婦の不妊治療でしか、体外受精は許されていないと耳にしたことがある。そうなると結婚していない由依に取れる方法は一つしかない。けれど男性経験もない由依が戸惑わないわけはない。
 それでも……この奇跡のような出会いに賭けてみたい。願いが叶う確率なんてほんの僅か。でも、進まなければ叶うことなどないのだから。

 大智は由依が答えを出すのを静かに待っていた。そしてようやく心を決め、由依は顔を上げた。

「私と……してください。よろしくお願いします。他には何も求めません。ご迷惑もおかけしませんので」

 そう言い切ると、由依は深々と頭を下げる。その頭上から大智が面食らったように声を上げた。

「瀬奈さん、顔を上げて」

 ゆっくり頭を起こすと、大智はホッとしたような緩やかな表情になった。

「僕が協力したいと申し出たんだ。書類上だけでも父親が必要ならもちろん認知する。養育費だって……」
< 31 / 253 >

この作品をシェア

pagetop