一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
二章 進んだ先にある夜明け
 ホテル、と言われて、由依はよくあるビジネスホテルを想像していた。
 大人になってから旅行へ行くこともなく、子どもの頃の家族旅行では、両親は好んで旅館を選んでいた。都内に住んでいれば近くを通りがかることもあったワンランク上のラグジュアリーなホテルを、なんとなく自分には縁の無い場所と思っていたのかも知れない。大智に手を引かれ連れて来られたその場所に、由依は物怖じしていた。

 少し待っていて、と言われて由依は大きな柱に沿って置かれていたソファに腰掛ける。
 開放感のあるロビーには、レストランで食事をしていたのか満足そうな表情の人でエントランスに向かう人、今からチェックインするのか大きなスーツケースを携えた人、Tシャツに短パンというラフな姿の外国人などが行き交っていた。

「お待たせ」

 ぼぉっと目の前の光景を眺めていると、フロントで手続きを済ませた大智が戻っていた。当たり前のように手を差し出され、由依はまた恐る恐るその手を取った。
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