一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 慣れないホテル内を歩き、着いたのは三十階にある一室だった。どうぞ、と促され部屋に入ると、奥の窓には星を散りばめたような都会の灯りが映り込んでいるのが目に飛び込んできた。
 大智が灯りを付けると、清潔感のあるアイボリーを基調としたシンプルな部屋が現れる。それに由依はホッとしていた。
 ドラマに出てくるような豪華な部屋だったらそれだけで緊張感は増すし、住む世界が違うことを嫌でも思い知らされただろう。けれどこの部屋はそう広いわけでもなく、大きめのベッドが一つに、ソファと小さなテーブルがあるくらいで、落ち着いた雰囲気だった。

「座って? 何か飲む?」

 大智は自分のバッグを置き、上着を脱ぎながら由依を促す。

「あ、いえ。お気遣いなく。さっきいただいたお水もまだありますし」
「そう? 必要だったら遠慮なく言って」

 大智はまるで、自分の部屋にいるように自然にクローゼットを開け上着を掛けている。そこを閉めると、カウンターの下にある冷蔵庫に向かっていた。

「僕は……一本、飲んでいいかな?」

 そう言って大智が取り出したのは、缶ビールだった。
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