一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと

　髪を撫でる手つきも、自分を見つめる瞳も、どこまでも優しい。今は自分に向けられたその優しさが、今まで自分以外の誰かに向けられたことがあるだろうし、これから自分じゃない誰かに向けられていくのだろう。自分たちはただ、利害が一致しただけの関係なのだから。
　それにしても、何故自分にそんな眼差しを向けてくれるのだろうか。由依はずっと不思議だった。まさか一目惚れしました、なんて一番しっくりこない。この短い間に好意を持たれるような会話はなかった。大智に見惚れてしまう自分でさえ、じゃあ好きなのかと問われても、そこまでの感情はまだ湧いていない。

「何、考えてるの？」

　髪の感触を確かめるように、何度も頭を上下していた手をピタリと止めて、大智は由依の顔を覗き込んだ。

「あ……。いえ……」

　由依は言葉を濁し曖昧に答える。聞きたいことはあるけれど、言い出せそうにない。

(どうして……ここまで、してくれようとしてるんですか？)

　喉元まで出かかった言葉を飲み込む。そんなことを聞いてもどうしようもない。きっとただの気まぐれだなのだろうから。

「……やめるなら……今のうちだよ？」