一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 不思議なことに、まるで昔からの知り合いだったかのように自然と会話が弾んだ。とはいえそこは、やはり初対面同士。軽い自己紹介から始まったが。
 お互い名前を伝え合ったあと、それとなく年齢の話になる。聞けば皆、由依より二学年上だった。

「俺たち高校のときの同級生なんだ」

 そう言ったのは由依の斜め前に座る、最近子どもが生まれたと言う与田(よだ)だ。隣にいる佐倉(さくら)はそれに付け加えた。

「一年の時同じクラスになって意気投合して。いまだにこうやってたまに会ってるんだよ」
「いいですね。そういう友だちって。私は短大のときの友だちにはたまに会ったりするんですけど……」

 ちびちびとカシスソーダのグラスを傾けながら由依は返す。それに相槌を打ったのは向かいにいる中村だ。

「確かに……高校の友人で今でも連絡し合ってるのって、この四人だけだよなぁ」

 しみじみと言う中村に「四人、ですか?」と由依は尋ねた。

「そう。実はもう一人来る予定なんだけど、あいつ忙しいからなぁ。今日も来るかどうか」
「まぁ、しがないサラリーマンの俺たちと違って弁護士だし。そりゃ忙しいだろ」
「義理堅いあいつのことだ。与田を祝いに顔見せるって」

 最初に答えた中村に、与田が続く。最後に佐倉が言ったあと、再び佐倉が口を開いた。

「それにさ。自分では雇われの身だしそう自由な身分じゃないって。それに……。好きで弁護士になったわけじゃないのはお前らも知ってるだろ?」

(弁護士になりたくないのに、なったってこと?)

 話を聞きながら由依は驚く。弁護士なんて、なろうと思っても簡単になれる職業ではない。なのにどうしてだろう? 由依は単純に疑問に思った。
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