一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 この園は社会福祉法人が経営している。園長はいるが、それとは別に、他の福祉施設も経営する理事長が存在する。普段滅多に園に来ることはないが、来ると保育士たちの間には緊張が走る。齢八十を超える男性で、かなり気難しい人だ。園長がいいと言ったことも、理事長がだめだと言えばひっくり返ることもあるくらいなのだ。

「次は発表会かぁ……。色々気は重いけど、理事長のためにやるわけじゃないし。零歳さんたちもデビューだし、瀬奈先生も頑張らなきゃね」
「そうですね。二月の発表会にはあの子たちももっと成長してるでしょうし。きっと頑張ってくれます」

 ゆっくりと給食を口に運びながら返す。

「だねぇ。子どもはあっという間に成長するしね」

 そうですね、と返しながら一口運んだご飯を飲み下した。胃につかえたような、そんな感覚が不安を煽った。

(……そんなわけ……ないよね)

 この体調の変化をいつまでも見て見ぬふりはできない。どこか風邪のような症状が続いているが、薬は飲まないようにしていた。元々生理不順で間隔もバラバラだったが、あれからきていない。

(確認……しなきゃ……)

 減っていかない給食をぼんやりと眺めながら、由依は考えていた。
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