一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「……瀬奈さん。瀬奈由依さん」

 場違いじゃないかと居心地の悪い待合室で名前を呼ばれ、「はい」と立ち上がるとそそくさと看護師の元へ向かう。
 誰も自分の事情など知らないけれど、なんとなく居た堪れない気持ちで座っていた。周りは幸せそうなオーラを醸し出す女性や、付き添いだろう夫の姿があった。そんな中にいると、自分はとても如何わしい人間に思えた。

「――では器具を入れますから、力を抜いてください」

 カーテン越しに、穏やかな口調の男性医師の声が聞こえた。
 ネットの口コミで探した、近所の病院で良さそうなところを選んだ。男性医師と聞いて躊躇ったが、"とても優しいおじいちゃん先生"といくつも書き込みがあり、ここに決めたのだった。
 それにしても、こんな格好で力なんて抜けない、と思ってしまう。
 ただでさえ下着を履いていない状態なのに、乗せられた台でこんなあられもない格好になるなんて。世の中母親はこれに堪えていたのかと改めて尊敬してしまう。
 自分の中に無機質な器具が差し込まれ思わず顔を顰める。同時に見えやすい高さにあるモニターに映像が映った。

「モニターを見てくださいね」

 そう言われ、由依は目を凝らして見た。モノクロの画面の意味は全くわからない。それを補足するように医師は喋り出した。
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