たゆたう、三角関係
新歓
新歓の飲み会で、目にした時「あっ」と気付いた。
同じ大学に進学していたことは知っていたものの、一学年3,000人近く入学する私立大学で、似たようなサークルがたくさんある中で、同じ高校出身の者同士が一つの飲み会の場にいるなんてそうそうない。
たしかにこの「TOWV-Top Of Wander Vogel-」は「ワンダーフォーゲル」と名前には入ってるものの、ただキャンプやバーベキュー、その他アウトドアを楽しもう、という気楽さで人気がある。
私も同じ学科で唯一仲良くなれた紗里が入るというから引っ張られるように加入した。
アウトドアサークルというものの、飲み会は繁華街雑居ビルの中、スナックやバーの看板の中に紛れるように並んでいたアジアンカフェダイニング「chaam」で行われた。
入り口でくじを引いた紙にはAからJまでのアルファベットが書かれ、同じアルファベットの紙が置かれたテーブルに向かうと、1年から4年までがバランス良く6人掛けテーブルに収まる形だ。
私が彼に気付いたのは、彼がくじを引いて手元の紙を見ながらキョロキョロとテーブルを探していた時。
隣には恐らく入学してから仲良くなったのだろう見覚えのない男が並んでいた。
私は視線を、向かいに座ったキツネ目の女の先輩に向ける。
胸元に「あ〜やん」と書いた名札をつけたその人は、目でニコッと笑い、「よろしくね」と言う。
「よろしくお願いします」
私は入社面談のような気持ちで頭をペコペコと下げると、あ〜やんさんの隣にひょろっとした痩せ型の男の人が座った。白いロンTにデニムというすごくシンプルな格好。胸元にはキレイではない青の字で「てつじ」と書かれている。
「てつじさん、4年になれたんですか」
「お前なー、こう見えて俺ね、まじ危なかった」
目の前で二人がひゃあひゃあと笑う。あ〜やんさんのキツネ目は余計に細くなった。