たゆたう、三角関係
改札を抜けて明かりを消した商業施設を横目に通り過ぎると、マンションが立ち並び、その奥に昔からの住宅街が広がる。

藤遼平は慣れた様子で私の隣を歩く。

「金子さん、駅前っ子だ」
「そんなことないよ、高槻さんとか駅直結のあのマンションに住んでたし」
「えーまじで、すげえな」

春にはなったけど、夜は寒い。
風邪引かないといいな、と祈る。

点滅する信号を渡ると、住宅街の雰囲気に移り変わる。

「晴人さ」と突然彼はその名前を口に出した。

「うん?どうした?」
「晴人、別れたらしいよ」

そう言ってジッと私の目を見る。
情報の整理をするのに少し空白の間ができてしまった。

「そんなこと言われても、もう関係ないし」
「なんか、晴人はそうでもないっぽいけど」

すっかり眠り込んだ静かな暗闇に、二人だけの乾いた足音が響く。
たまに車が通ったりするから危ない。

「って言われてもなあ」
「って言われてもなあ、か」
「うん、一年前に終わってるし」

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