たゆたう、三角関係
彼があまりにも意味ありげに笑うから、私は思わず固まったようにそこに立ち止まってしまった。
藤くんも立ち止まる。腕同士は離れない。

「俺も結構そこまで考えて、いや、金子さんはそんなこと考えてないだろうなって自分に言い聞かせてるんだよね」

当たってる左腕が急に熱を持ち始め、でも固まったように動かせない。私の気持ちを見抜かれてるようで、藤くんの目から視線を動かせなくなる。

試されているような時間。

藤くんにだったら、頭を撫でられても嫌じゃないかも。

数秒、もしかしたら1秒とちょっとの間だったのかもしれない。
彼は私の目から下にぶらさがるお互いの手の先へと視線を動かした。

そっと手のひら同士が触れ合って私たちの手は繋がれる。

藤くんって私のこと好きなのかな。

藤くんの視線はまた私の目に戻ってきて言った。

「今、何考えてんの?」
「藤くんって私のこと好きなのかなって」

私の言葉を、彼はただ「ははっ」と笑い飛ばすだけだった。

たった30mの距離を、私たちは手を繋いで歩く。てつじさんのアパートのドアを開ける直前に、そっとその手は放たれた。


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