たゆたう、三角関係
晴人が私を家まで送ってくれる時はいつも家の近くのドーナツ屋に行って、わざと家を通り過ぎ土手まで出て時間を潰しながらゆっくり食べてゆっくり家に帰っていた。

ここらへんは本当に店がなくて個人経営のドーナツ屋さんとカツ丼屋さんしかない。

「奢るよ、一緒いこ」

彼は慣れたように言う。今でも私のことを彼女みたいに扱うんだ、この人。

断る事もできたのに、私は彼と住宅街へと下った。

私たちにとっては何度も何度も歩き慣れた、いつもの道だった。

「実琴、彼氏できた?」

自転車を轢きながら彼は言った。
少し涼しげな視線に見下ろされながら、私は首を横に振る。

「俺、別れちゃったんだよねえ」

で?と聞きたくなるような間が流れる。

狭い住宅街の道路。
どこかに行くおばさんとすれ違うのみで平日より人が少ない。

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