たゆたう、三角関係
カラフルなドーナツを見比べていると、晴人は店内の隅に置かれたサンドウィッチを丸いお盆に乗せていく。

「好きだね」
「俺ここのサンドウィッチ好きなんだよね、美味いよ」
「知ってる」

私も一つドーナツを選ぶと晴人がまとめて払ってくれた。昔は割り勘だったのに。「駅前のコンビニでバイトしてんだ」と言う。

店を出て家に向かおうとしたら、晴人までついてきた。

「ふじくん家行くんでしょ?」
「だってすぐじゃん、実琴ん家」

せっかく太陽が出ていたのに、また雲が覆った。出たり入ったり。

「ねえねえ、実琴」

慣れたように彼は言う。

「デートしよ」

彼は今にも私のあの6畳の部屋に上がり込んできて、テーブルにお菓子を置いて、三ツ矢サイダーを一口飲んで、そして髪を撫でて、私の後ろに回って腕を絡めてきそうだった。

湿った空気が肌に残る。

そうか、私たちはもう受験から解放されたんだ。

「来週暇じゃないの?行こうよ、どっか」

この軽い感じ。彼は軽く私の頭に手を乗せた。
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