たゆたう、三角関係
学食
駅を出ると大学までは500mほど歩く。マンションやビルが立ち並ぶけど何故か活気がない寂しげな道を大学生が黙々と歩く。途中、大きなショルダーバッグを提げて歩くその姿を見つけた。

駆け寄って声をかける。

「おはよ」

肩に触れたからか、少し驚いたようにして振り返り、私と目が合うとフッと空気が抜けたようにリラックスして笑った。

「ビックリした、金子さんか」

朝だからか少し低いテンションで言う。

「いつもより早くない?どうしたの」
「昨日、晴人帰ってからずっと寝てた。じいさんと猫の話読めてないけど」

ずっと寝てた割には表情にスッキリ感はなく、どこかぼんやりとした目を向ける。

「あれ、最後猫の幸せを祈って死ぬよ」
「まとめ方雑過ぎる」
「やっぱり猫には長生きして、眠るように死んでほしいって遺書の中に書かれて終わる」
「ネタバレだわ、俺着いたら読もうと思ってたのに」

大学の頭が少し見えてきた。私たちは少し無言になって、次の会話を探す。

でも昨日、晴人と久しぶりに会って話したことを言えず、週末二人で会う事も言えず、だから余計に何も会話が見つからないんだと気付いた。

もしかしたら彼も晴人から昨日何か聞いたのかもしれない。私たちは友達でありながら気軽にその話をできる間ではなく、探るように隠すように過ごしていた。


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