たゆたう、三角関係
メインまで乗せたお盆を持って会計に行くと、またおばちゃんがお盆の上の品々を見ながら慣れた手つきでレジに打ち込んで行く。

学食はありがたいことに安いと思う。小鉢やデザートを乗せても500円に収まるように設計されている。

流れ作業のように一つの定食を作り、私たちはテーブルに戻ってくると、紗里と悠馬の向かいに座った。

二人がニヤニヤして私たちを見る。

「なに」
「二人かわいいなと思って」

藤くんは呆れるように「かわいいって」と受け流す。

「ねえねえ、夏休み中さ旅行行かない?」

唐突に紗里が言ってきた。どうやら二人でその話をしてたのか悠馬が隣でうんうんと頷いている。

「別にいいけど」

お盆をテーブルに乗せて椅子に座りながら藤くんが答えた。

「海行きたいよね海」

悠馬が言う。悠馬は髭のせいで大学生に見えないとよく笑われている。少し伸ばした髪を抑えるように深くバケットハットを被ってるため目元が見えにくい。実は目元はかわいくて、髭と髪をどうにかすれば爽やかな高校生のようになる。ゆるいスタイルが、なぜか紗里とマッチしていて、二人はすぐに付き合うことになった。

「海か、何年も海行ってないや」

藤くんがラーメンを食べながら言う。

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