たゆたう、三角関係
2人掛けの小さなテーブルにコーラとカフェラテだけを乗せる。私がソファーに座ると、晴人は慣れたように「これそっち置いて」とリュックを渡してきた。

彼は1年からプレゼミがあって教授のゼミに所属しないといけないこと、誰とプレゼミが一緒か、課題が多い、バイト始めた、バイト先の中国人のヤンさんが面白いことなどを次々と話し続けた。

すごく楽しそうに話すから、今の大学生活が楽しいんだと思う。

「よかったね」
「実琴は?ふじとサークル一緒なんでしょ」
「うん、仲良くやってるよ」
「そうなんだ、ふじどう?彼女できそう?」
「どうかなあ、先輩から可愛がられてはいるけど」
「ふじが女といるの想像つかないな」

屈託のない笑顔を見せる。この人は何かを隠すとか嘘をつくのが苦手な人だったことを思い出す。いつも真っ直ぐだった。

「実琴もうちの大学に来れば良かったのに」

彼はまた言った。高校3年の時、何度も喧嘩の元になった言葉を。
晴人は悪気もなく、ただ私と一緒にいたいだけで発していた言葉だけど、私の進路を妨害されているようで鬱陶しかった。

干渉したがるお母さんみたいな存在。自由になれない息苦しさを感じた。私は高校と大学で人生に区切りをつけたかったのかもしれない。中学受験をして6年間同じ空間に通い続けて、さらに内部進学なんてまっぴらだった。

ほんの僅かな心の引っ掛かりが大きくなって意地になって外部の大学の受験を決めた。それはあの時の私からすると挑戦だった。

「今までみたいには会えない」と言うと、「もう俺たち無理だよ」と彼は言い放った。
本当にそれが最後になってしまった。

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