たゆたう、三角関係
隣にある顔を見ると、既に彼はじっと私を見ている。

「これからもこんな風に会ってくれる?」
「晴人は今私と会ってて楽しいの?」
「うん、楽しい」

嘘みたいだ。
私には今目の前に広がるゆったりとした川の流れも、雲の流れも、隙間から覗く青空も、全てが灰色に見えて、ずっと強張ってるというのに。何も楽しむ余裕がない。

「楽しかったのにな」

付き合ってた頃はワクワクして楽しかったのに、どうして今はこんなにワクワクしないんだろう。

「もう会わなくていいんじゃない?それぞれいい人がきっといるよ」

隣で晴人は口を尖らせる。斜め下に視線を落として、受け入れないような表情だ。

「私よりもっと可愛い子と付き合いなよ」

手抜きな言葉。もう少し柔らかくオブラートに包んで突き放しても良かったはずなのに、そこまでケアする余裕がなかった。

「もう一回、俺にチャンスはないの」
「うん、今は考えてない」

雲に隠れていた太陽が姿を見せて、川面がキラキラと反射しだした。やっとその輝きが私の心に届く。
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