たゆたう、三角関係
「金子さんだよね」

藤遼平が話しかけてきたのは、トイレから出てきて席に戻る途中だった。

私は初めて気付いたような驚いた演技をしてみせた。

「藤くんだよね」
「そう、あの、晴人の」

そう言いながら藤遼平は言いにくそうに濁す。

「いいよ、全然」
「あ、ほんとに?いや、俺も話は聞いてたからさ」
「藤くんもここ受けたんだね」
「そう、乗り換えがないっていう理由だけで選んだんだけど」
「京王線?」
「京王線だね」

彼はふふっとテンション低めに笑う。
もともと笑ってるようなかわいい目が細くなった。

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