たゆたう、三角関係
「ねえ、暑い」
「ごめん、でも言ったら帰る」

少し濁声で鼻にかかる声。癖のある笑い方。

「俺、実琴のことが好き」

うるさい蝉の合唱に掻き消されながらも、しっかりと私の耳に届いた。

「もう一回、やり直してくれませんか」

この人はなぜこんなにも私のことを追い続けてるのだろう。
この人を早く自由にさせてあげないといけない。

「ごめん、私も藤くんのことが好き」

彼は笑顔のままだった。
笑顔のまま、言葉を咀嚼するようにうんうんと頷いて、飲み込んで、最後に「分かった」と答えた。

誰かがこぼしたのであろう溶けたソフトクリームの塊が視野の隅に映る。3羽の鳩がつついている。
これ以上は私まで溶けて焦げてしまいそうな、干からびそうな、そんな暑さだ。

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