たゆたう、三角関係
「実琴は?藤とケンカしないの?」

あたかも既に付き合ってるような口調だったから笑ってしまう。

「なんで藤くんなんですか」
「え、藤でしょ?」
「あ〜やん、あ〜やん、藤と実琴、付き合ってないんですよ」
「うそ、うそでしょ」

あ〜やんさんは私の顔を覗き込む。私は逃げ場を失って視線だけ逸らした。

「いろいろあるんだよね、実琴も。間違いなくいい感じだったのに、お互い臆病だから付き合えてないんじゃないかなって私は思う」

紗里が自分の観点で語る。少し勘違いしてるようだった。私たちは友人関係を壊したくないとか、臆病とか、そういうんじゃないと思う。

「実琴は藤のこと好きじゃないの?」
「好きです」

流れるように私の口から出た。

「好きだったんですけど、そしてそこにあったはずなんですけど、どこに行っちゃったのか見失いました」

口の中が乾く。一口飲み物を飲んで缶を足元に置いた。

「それは藤が悪い」

あ〜やんさんが言い切って、隣で紗里も頷いた。

「いや、藤くんも悪くないです。まだそういうタイミングじゃないだけで」
「もーそんなこと言ってたら何も生まれないよ」

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