たゆたう、三角関係
22時を過ぎてチラホラと帰る人も出てきた頃、紗里としゃがんで喋っていたら悠馬が近づいてきた。

「何か買ってこようよ」と紗里に声をかける。

「私トイレにも行きたい」
「俺も」

紗里はサクッと立ち上がって小さなお尻をパンパンと叩く。慣れたように悠馬が紗里の腰に手を回した。
「じゃあ行ってくるね」と私に言葉だけを残して二人は去っていった。

一人残される夜の河川敷。
どうしようかな。

視線を投げると、てつじさんと藤くんが二人で立って笑っていた。藤くんが私の視線に気付いたのか、こっちを見る。てつじさんに何か断りを入れて、こっちに向かってきた。

少しずつ近づいてくるその姿を私はずっと見る。
少しずつ、少しずつ。
少し口元に笑みを浮かべている。

「ちょっといい?」

久しぶりに話す藤くんは前と変わらなかった。

「いいけど?」
「怒ってる?」
「怒ってないよ」

藤くんは手を差し伸べる。私はそこに手を乗せて、よいしょと立ち上がった。

藤くんは私を人が少ない方へと連れ出す。

なんとなくみんなが気にしてコソコソしているのが分かる。だけど藤くんは気にしないようにゆったりと歩く。私も極力自然体を装った。

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