新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「そろそろ、行くぞ。 あまり長く居ると、風邪をひくから。 ほら、おいで」
私が飛び降りるのが怖いことを知っているのか、高橋さんは優しく微笑みながら両手を差しのべてくれている。
でも、何となく躊躇してしまい、高橋さんの顔を見上げた。
「首に、手をまわして」
恥ずかしかったけれど、言われるままその言葉に従った。
あっ……。
次の瞬間、また何時かみたいに高橋さんにそのまま抱きしめられて、身動きがとれなくなってしまった。
そして、高橋さんが私の左肩の方に顔を寄せた。
「俺の中では……部内恋愛は存在しない」
エッ……そんな……。
満天の星空の下、耳元で囁いた高橋さんの声が、張りつめた冬独特の空気の匂いと共に静寂の中、まるで大音量のように響き渡る。
咄嗟に力を込めて高橋さんから離れようとしたが、余計押さえつけられてしまった。
「高橋さん。 そ、そんな……。 じゃあ、もう私は会計に居られないんですか?」
「大人しく、最後まで聞け」
エッ……。
優しく諭すようなその声に、今にも音をたてて制御不能になりそうな心臓の鼓動を必死に抑えながら高橋さんの腕の中で、不安に駆られながらも次の言葉を待った。
「会社は、仕事をしに行く場所だ。 そして、その仕事をすることによって俺達は給料を貰っている。 帰りにIDカードを読み込ませて退社するまでは、当たり前のことだが、それに見合う働きをしなくてはならないというのが俺の持論だ。 だから部内だろうが、部署が違おうが、社内恋愛自体が俺の中には存在しない。 一旦、会社内に入ったら、それは遊びで来てるわけではないんだからな。 恋愛だとか、仕事以外のことは外でやれという話になる」
その言葉も、その声も、高橋さんの胸を通して私の耳に聞こえている。 でも、それは顔が見えなくとも、明らかに真剣そのもののように響いていた。
私が飛び降りるのが怖いことを知っているのか、高橋さんは優しく微笑みながら両手を差しのべてくれている。
でも、何となく躊躇してしまい、高橋さんの顔を見上げた。
「首に、手をまわして」
恥ずかしかったけれど、言われるままその言葉に従った。
あっ……。
次の瞬間、また何時かみたいに高橋さんにそのまま抱きしめられて、身動きがとれなくなってしまった。
そして、高橋さんが私の左肩の方に顔を寄せた。
「俺の中では……部内恋愛は存在しない」
エッ……そんな……。
満天の星空の下、耳元で囁いた高橋さんの声が、張りつめた冬独特の空気の匂いと共に静寂の中、まるで大音量のように響き渡る。
咄嗟に力を込めて高橋さんから離れようとしたが、余計押さえつけられてしまった。
「高橋さん。 そ、そんな……。 じゃあ、もう私は会計に居られないんですか?」
「大人しく、最後まで聞け」
エッ……。
優しく諭すようなその声に、今にも音をたてて制御不能になりそうな心臓の鼓動を必死に抑えながら高橋さんの腕の中で、不安に駆られながらも次の言葉を待った。
「会社は、仕事をしに行く場所だ。 そして、その仕事をすることによって俺達は給料を貰っている。 帰りにIDカードを読み込ませて退社するまでは、当たり前のことだが、それに見合う働きをしなくてはならないというのが俺の持論だ。 だから部内だろうが、部署が違おうが、社内恋愛自体が俺の中には存在しない。 一旦、会社内に入ったら、それは遊びで来てるわけではないんだからな。 恋愛だとか、仕事以外のことは外でやれという話になる」
その言葉も、その声も、高橋さんの胸を通して私の耳に聞こえている。 でも、それは顔が見えなくとも、明らかに真剣そのもののように響いていた。