新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
そんなことって……その子の本当の父親は高橋さんで、それなのにどうして? もし、その子が本当のことを知ってしまったら……何故?
「ミサは、俺は将来がある身だから……だから自分から身を引いた。 自分と子供の為に一生を棒に振って欲しくなかったから、敢えて俺に嘘をついた。 だが、それでも俺の子供は産みたかった。 子供には、罪はないからと……だからその人を頼ったんだ」
「そんな……」
「それを知ったのは、ごく最近なんだ」
でも、何故?
何で、今頃になってミサさんが……。
そういうことって、一生黙って生きていくことの方が多いはずなのに。 それぐらいの決心でないと、出来ないことだもの。
「ミサから明良の実家に電話があって、俺を捜しているから居場所が知りたいと。 それで、明良から連絡があってミサの子供が俺の子供だと知らされた」
何で、明良さんが? 分からない。 どうして、そこで明良さんから?
「明良はミサから聞いて事情を既に知っていて、それで明良がセッティングしてくれてこの病院でミサと、ミサのご主人と俺は会ったんだ。 そこで、子供が病気だと知った」
病気?
「病気って……」
「正直、驚いた。 骨髄移植が必要だと聞いて、血縁者の方がHLAの適合率は非血縁者のドナーより少し高いらしい。 ただ必ずしも適合するとは限らないが……ドナー登録をして待っている時間がもう……あまりないというか、早い方がいいという話だった。 それでいろいろ相談して仕事のこともあるから、本来ならば相手の指定病院に行くのが筋なのだが、俺の我が儘で明良の病院にしてもらったんだ」
「だから、検査入院を……」
だから、病気じゃないと……だから検査結果も……。
「ああ。 そうだ。 調べた結果、HLAは適合した。 色々調べて、DNA鑑定もしてもらった」
「それじゃ、ミサさんの子供は……」
「俺の子だ」
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