新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「高橋さ……ンンッ……」
その言葉だけで、十分だった。
満天の星空の下、甘く柔らかなキスを交わす。
これからきっと、私が今考えているよりも遥かに大変なんだと思うけれど、傍に高橋さんが居てくれると思うだけで、どんなに苦しくても乗り越えられる気がする。 高橋さんが傍に居てくれれば、きっと……。
「また泣く。 お前は」
「だって……」
「さあ、帰るぞ」
高橋さんが、堤の上から私を降ろしてくれた。
「と、言っても、今日は帰さないけどな」
「えぇっ?」
その言葉に、堤に敷いていたブランケットを畳む手が止まってしまい、高橋さんを見ると 小首を傾げるようにウィンクしながら私を指さした。
な、何?
高橋さん。
そんなこと、急に言い出して……冗談でしょ?
「陽子ちゃぁん。 高橋君家にお泊まり決定! 泣いた罰ぅ」
「ちょ、ちょっと、待って下さい。 だって、何も用意して来てないですし……そ、それに……」
「それに?」
それに……先週ニューヨークで、エッチしたばっかりなのに。
また、もう? なんて、言えないし……。
どうしよう。
「あ、あの……そうだ! そ、そうなんですよ。 明日、用事があって」
「本当かぁ? それ、嘘だろ?」
うわっ。
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