新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
下着、どれにしよう。
あと、着替えも……。
そんなことばかり考えているだけで、ドキドキしていた。
「随分、さっきから無口だな」
「えっ?」
不意に、高橋さんに声を掛けられて我に返った。
「あっ。 いえ……何でもないです」
「明日、朝一番で買い物に行こう。 俺も、お前も、まだプレゼントを買ってないし」
「プレゼント?」
プレゼントって……何?
「毎年、それぞれプレゼントを持って来るんだ。 どんなプレゼントでも良いんだが、1人予算は2000円以内と決まっていて、それをあみだくじで決めるんだ。 勿論、自分の買ったものが自分に当たる場合もあるから、プレゼント選びも結構真剣になるんだよ」
そうなんだ。 何だか、面白そう。
「今年は、お前も参加だから。 明日、2000円以内の何かプレゼント買わないとな」
「はい! 何だか、楽しそうですね。 でも、何でもいいんですか?」
男の人の趣味って、分からないし……。
まして、自分に当たるかもしれないとなると、余計に難しい。
「ああ。 だから、俺なんて去年は明良のが当たっちゃって……」
「明良さんのプレゼントって、何だったんですか?」
明良さんの選ぶものって、どんなものなんだろう?
もの凄く、興味があった。
「風呂場のマット」
「えっ?」
「何で、またお風呂のマットだったんですか?」
明良さんの頭の構造が、イマイチ理解出来ずにいる。
「明良曰く、仁の家も俺の家にもなかったから、自分が入った時に床が冷たいからなんだとか」
プッ!
「で、でも、明良さん本人じゃなくて、よく高橋さんに当たりましたよね?」
何となく、明良さんらしい気がした。
「あっ! もしかして……あの洗面所の間に差し込んである、あのケロチャンのマットって……」
すると、高橋さんが黙って頷いた。
いつも、何で此処にケロチャンのマットがあるんだろうと不思議に思っていたが、そういうことだったんだ。
あのマットは、明良さんの選んだプレゼントだったのね。
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