新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
すると、高橋さんは微笑みながらキッチンの方へと消えていった。
冷蔵庫を開ける音がして、多分ビールの缶を開ける音だろうと思ってると、案の定、缶ビールを持ちながら高橋さんがリビングに戻ってきてソファーに座った。
その姿を見ていると、寛いでいる高橋さんなのに、何故だか何となく近寄りがたく感じて、このまま此処に荷物を置いといても邪魔だから片付けようと思ったが、そうかといって高橋さんの部屋に自分から荷物を持って入るのも気が引けて、取り敢えずゲストルームに置かせてもらおうと足を向けた。
「荷物は、そっちじゃなくて俺の部屋に置いておけばいいだろ?」
「えっ? で、でも……」
高橋さん言った言葉の意味が、何となく分かったような気がした。
きっと、高橋さんの部屋で着替えて……やっぱり一緒に寝るってことになるのかな。
明良さんと仁さんが、明日もし泊まるとしたら、その時もやっぱり高橋さんと一緒の部屋になるのかな?
ハッ!
ということは……。
明良さんと仁さん達に、高橋さんと付き合っていることが分かっちゃうってこと?
でも、いつかは分かってしまうことなんだろうけれど、まだ心の準備が出来ていないというか……。
思わず、ソファーに座っている高橋さんの所に駆け寄った。
「高橋さん!」
「ん?」
いきなり駆け寄って高橋さんの前に立ったので、高橋さんが不思議そうに私の顔を見上げた。
< 20 / 237 >

この作品をシェア

pagetop