新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
果たして高橋さんは、 もう一度私に向き合ってくれるのだろうか? そんな日が、 果たして本当に来るのだろうか?
無意識のうちにそんなエゴが働いていて、 仕事が終わって家に帰りお風呂に入ってベッドに横になる時、 お揃いの時計を見ながら決まってそんな事を考えてしまう。
考え出すと堂々巡りで眠れなくなって、 眠れたと思っても眠りが浅いのかすぐに目が覚めてしまう。 睡眠不足というか、 軽い不眠症気味になっている感じだった。
「此処、 いいか?」
エッ……。
不意に後ろから声を掛けられ、 その声に反応して振り返ると高橋さんがトレーを持って立っていた。
「は、 はい。 どうぞ」
ボーッとしていたので、 だらけて座っていた感じの姿勢を慌てて正した。
やっぱり目の前に高橋さんがいると、 緊張してしまう。
無意識に、 高橋さんの右手首を見る。
時計……。
しているのか?
していないのか?
どちらなのか、 わからない。
あの日以来、 気を付けて見ていたが、 出張中は付けていなかったのはわかっていた。
でも……もしかして? という期待から、 いつも高橋さんの右手首を見てしまう。
でもやっぱり今日も、時計はしてくれてはいなかった。
何を話していいのか言葉に詰まって、 1人で焦ってしまっている。
「何だ。 それしか食べないのか?」
「えっ?」
いきなり聞かれて、 驚いてしまった。
「大丈夫か? 顔色もあまり良くないぞ」
「いえ、 大丈夫です。 そ、 それじゃ、 お先に行っています」
「はい」
何だか高橋さんから逃げるように席を立って、 小走りに立ち去って来てしまった。
何でだろう?
もっと、 一緒にいたいのに。
高橋さんと一緒にいる事が、 いちばん嬉しいはずなのに。
顔の突貫工事を化粧室で済ませ、 自分でも不思議な気持ちのまま事務所に戻った。
しかし、 夕方近くから何だか本当に書類の数字がいつも以上に霞んで見えてきた。
嫌だな。 こんな時に……。
必死に目を見開きながら計算をこなして、 何とか今日も無事に終われそうだった。
それでも22時を過ぎていたので、 中原さんも今日のデートはキャンセルしていたから、 3人でご飯を食べて行こうという事になった。
いつもならとても嬉しいはずなのに……。 でも、 何だか今日は行きたくない。 そんな気分になれない。
昼もそうだったが、 どうも自分でもおかしいと思う。 高橋さんと一緒にいられるから、 嬉しいはずなのに……。
それなのに今は早く家に帰って、 ベッドに横になりたかった。
「すみません。 私、 今日は帰ります」
「どうしたの?」
中原さんが、 不思議そうに問い掛けてきた。
「えっ? 何だかちょっと疲れたみたいで……。 今日は真っ直ぐ帰って、 早く寝ます。 お2人は、 私に構わず行かれて下さい。 それじゃ、 お先に失礼します」
そんな私を見て、 高橋さんと中原さんは顔を見合わせていたが、 歩きかけていた私は2人を置いてそのまま警備本部を通って、 駅へと向かった。
家に着いて気怠い体で最後の力を振り絞るように部屋着に着替えると、 ベッド倒れ込むようにして横になった。
ああ、 楽だ。
そして、 そのまま何も食べずに翌日の昼過ぎまで寝てしまっていた。
無意識のうちにそんなエゴが働いていて、 仕事が終わって家に帰りお風呂に入ってベッドに横になる時、 お揃いの時計を見ながら決まってそんな事を考えてしまう。
考え出すと堂々巡りで眠れなくなって、 眠れたと思っても眠りが浅いのかすぐに目が覚めてしまう。 睡眠不足というか、 軽い不眠症気味になっている感じだった。
「此処、 いいか?」
エッ……。
不意に後ろから声を掛けられ、 その声に反応して振り返ると高橋さんがトレーを持って立っていた。
「は、 はい。 どうぞ」
ボーッとしていたので、 だらけて座っていた感じの姿勢を慌てて正した。
やっぱり目の前に高橋さんがいると、 緊張してしまう。
無意識に、 高橋さんの右手首を見る。
時計……。
しているのか?
していないのか?
どちらなのか、 わからない。
あの日以来、 気を付けて見ていたが、 出張中は付けていなかったのはわかっていた。
でも……もしかして? という期待から、 いつも高橋さんの右手首を見てしまう。
でもやっぱり今日も、時計はしてくれてはいなかった。
何を話していいのか言葉に詰まって、 1人で焦ってしまっている。
「何だ。 それしか食べないのか?」
「えっ?」
いきなり聞かれて、 驚いてしまった。
「大丈夫か? 顔色もあまり良くないぞ」
「いえ、 大丈夫です。 そ、 それじゃ、 お先に行っています」
「はい」
何だか高橋さんから逃げるように席を立って、 小走りに立ち去って来てしまった。
何でだろう?
もっと、 一緒にいたいのに。
高橋さんと一緒にいる事が、 いちばん嬉しいはずなのに。
顔の突貫工事を化粧室で済ませ、 自分でも不思議な気持ちのまま事務所に戻った。
しかし、 夕方近くから何だか本当に書類の数字がいつも以上に霞んで見えてきた。
嫌だな。 こんな時に……。
必死に目を見開きながら計算をこなして、 何とか今日も無事に終われそうだった。
それでも22時を過ぎていたので、 中原さんも今日のデートはキャンセルしていたから、 3人でご飯を食べて行こうという事になった。
いつもならとても嬉しいはずなのに……。 でも、 何だか今日は行きたくない。 そんな気分になれない。
昼もそうだったが、 どうも自分でもおかしいと思う。 高橋さんと一緒にいられるから、 嬉しいはずなのに……。
それなのに今は早く家に帰って、 ベッドに横になりたかった。
「すみません。 私、 今日は帰ります」
「どうしたの?」
中原さんが、 不思議そうに問い掛けてきた。
「えっ? 何だかちょっと疲れたみたいで……。 今日は真っ直ぐ帰って、 早く寝ます。 お2人は、 私に構わず行かれて下さい。 それじゃ、 お先に失礼します」
そんな私を見て、 高橋さんと中原さんは顔を見合わせていたが、 歩きかけていた私は2人を置いてそのまま警備本部を通って、 駅へと向かった。
家に着いて気怠い体で最後の力を振り絞るように部屋着に着替えると、 ベッド倒れ込むようにして横になった。
ああ、 楽だ。
そして、 そのまま何も食べずに翌日の昼過ぎまで寝てしまっていた。