新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「だって、 今決算で忙しいし……それどころじゃないでしょ? 私だってそんないちばん忙しい時にお見舞いに来てもらっても、 申し訳ないし……」
「ハハッ……陽子無理しちゃって。 本当は、 会いたいくせにぃ」
「そ、 そんな事ないわよ! まゆみったら、 もぉ……からかわないでよね」
でも本当は、 ちょっぴり会いたい気持ちもあった。
病室のドアがノックされる度に、 淡い期待をしてしまっている自分が居るのも事実で……。
また週末に、 まゆみは来てくれると言って帰って行った。
そんな月末の金曜日。
きっと今日も高橋さんと中原さんは忙しいんだろうなぁと、 ふと思いながら点滴袋の残量を下から見上げていた。
トントン。
時計を見ると、 15時過ぎ。
お母さんは、 今日は用事があって来られないって言っていたし……誰だろう?
「はい……」
スーッとドアが横に引かれ、 寝ながら少しだけ首を上げて見ると、 一瞬幻覚かと思ってしまった。
「具合は、 どうだ?」
そこにはいつも見慣れていた、 私が最も好きなスーツ姿の高橋さんが立っていた。
「高橋さん……」
高橋さんは静かにドアノブに少しだけ力を加えて後ろ手で閉めると、 ベッドの方へと近づいて来た。
そう……私の大好きな香りと共に。
どうしよう。 ドキドキしている。
ベッドから起きあがろうとして、 高橋さんに制止された。
「無理するな。 そのままでいい」
「すみません」
高橋さんは近くにあった椅子に腰掛け、 何故か点滴のパックを見上げている。
「ど、 どうしたんですか? こんな時間に、 あの……お仕事は?」
「ん? 税務署の帰りに、 ちょっと寄ってみた。 だから、 そんなにゆっくりもしていられないんだが……」
「そんな……わざわざ、 すみません! お忙しいのに」
「本当は、 もっと早く来たかったんだが、 一昨日も昨日も時間が作れなくて」
とんでもない。
私なんかの為に忙しい高橋さんが、 わざわざお見舞いに来てくれるなんて滅相もない。
思いっきり、 首を横に振った。
「ハハッ……陽子無理しちゃって。 本当は、 会いたいくせにぃ」
「そ、 そんな事ないわよ! まゆみったら、 もぉ……からかわないでよね」
でも本当は、 ちょっぴり会いたい気持ちもあった。
病室のドアがノックされる度に、 淡い期待をしてしまっている自分が居るのも事実で……。
また週末に、 まゆみは来てくれると言って帰って行った。
そんな月末の金曜日。
きっと今日も高橋さんと中原さんは忙しいんだろうなぁと、 ふと思いながら点滴袋の残量を下から見上げていた。
トントン。
時計を見ると、 15時過ぎ。
お母さんは、 今日は用事があって来られないって言っていたし……誰だろう?
「はい……」
スーッとドアが横に引かれ、 寝ながら少しだけ首を上げて見ると、 一瞬幻覚かと思ってしまった。
「具合は、 どうだ?」
そこにはいつも見慣れていた、 私が最も好きなスーツ姿の高橋さんが立っていた。
「高橋さん……」
高橋さんは静かにドアノブに少しだけ力を加えて後ろ手で閉めると、 ベッドの方へと近づいて来た。
そう……私の大好きな香りと共に。
どうしよう。 ドキドキしている。
ベッドから起きあがろうとして、 高橋さんに制止された。
「無理するな。 そのままでいい」
「すみません」
高橋さんは近くにあった椅子に腰掛け、 何故か点滴のパックを見上げている。
「ど、 どうしたんですか? こんな時間に、 あの……お仕事は?」
「ん? 税務署の帰りに、 ちょっと寄ってみた。 だから、 そんなにゆっくりもしていられないんだが……」
「そんな……わざわざ、 すみません! お忙しいのに」
「本当は、 もっと早く来たかったんだが、 一昨日も昨日も時間が作れなくて」
とんでもない。
私なんかの為に忙しい高橋さんが、 わざわざお見舞いに来てくれるなんて滅相もない。
思いっきり、 首を横に振った。