新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
何か、いいな。 そういうのって。
だけど、明良さんもバスケット部だったはずだけど……。
「でも、確か明良さんもバスケット部でしたよね? 明良さんのポジションは、どこだったんですか?」
あっ……。
つい、高橋さんに話し掛けてしまった。
「お前、本当は眠くないんだろ」
うっ。
もしかして、気づかれてしまったかも。
「明良は、フォワード」
明良さんは、フォワード……。 
でも、そう言われてもフォワードが何処なのかも分かっていない私には、まったくピンとこない。
「だから、お前のことを俺が敢えて彼奴等に言わなくても、直ぐに気づくはずだから、言っても言わなくても同じこと。 だいたい、お互い何を考えているか分かるから。 分かった?」
高橋さん……。
「そんなことぐらいで、泣いてたら駄目だ」
横に寝ている高橋さんが、私を引き寄せ抱きしめた。
仄かに香る、石鹸の匂いと高橋さんの香り。
この香りに包まれていると、私はいつだって安心出来る。
変な趣味だと言われるかもしれないけれど、どさくさに紛れて高橋さんの胸に鼻を押しつけて、思う存分高橋さんの香りを堪能していた。
「俺だって、彼奴等に彼女が出来たら直ぐに分かるように、彼奴等も分かるんだって。 もしそうだと分かっても、敢えてそれを俺は追求しようとも思わないが」
「じゃ、じゃあ、明日は何も聞かれないで済むんですか?」
そこが、1番気がかりなところだった。
冷やかされたり、茶化されたりするのが大の苦手だから、直ぐに赤面しちゃって凄く嫌だから。
明日、もし明良さんと仁さんにいろいろ聞かれて突っ込まれたら、きっととんでもないこととか言っちゃいそうで、今から内心ビクビクしている。
「フッ……。 俺には、言わないと思うけど?」
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