新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「どうしてですか?」
何で、高橋さんには言わないんだろう?
「からかい甲斐がないからだろ? でも、お前はなぁ……。 ちょっと、危険かもな。 ハハッ……」
「ええっ? そんなぁ……。もしそうなっちゃったら、助けて下さいね」
思わず不安になって、高橋さんに自分から手をまわしすがりついた。
「さあな?」
それなのに、高橋さんはまるで他人事のような空返事をする。
「もう、高橋さんの意地悪!」
「ん?」
エッ……。
いきなり高橋さんに真上から覆いかぶさられ、顎を持ち上げられた。
「俺が本当に意地悪かどうか、試してみろよ」
「えっ? あっ……」
そう言って、高橋さんが私の両手首を押さえつけキスをした。
「アンッ……ンンッ……」
深いキス。
必死に逃れようとするけれど、両手首を押さえつけられているので身動きが取れない。
そのうち頬を這うようにして、高橋さんの唇が私の右耳にキスをした。
ひゃっ。
余裕などなくて休む暇も与えられず、高橋さんの舌が私の右耳をなぞるようにして舐め、そのまままた唇に戻って来ると、乱暴な深いキスに変わっていた。
「ンンンッ……ンンッ……」
息が苦しくて、必死に離れようとしてもなかなか離してくれない。
ほんの僅かなインターバルをおいてくれても、また直ぐに掴まってしまう唇。
しかし、何故か何時の間にかそれが夢見心地になって、気がつくと高橋さんの首に両手をまわしていた。
貪るように激しいキスを交わしているうち、高橋さんの唇が首筋を這いながら鎖骨のあたりまで来て、思わずドキッと感じて体を捩らせてしまった。 その拍子に、高橋さんの体との間に隙間が出来て、高橋さんが私の体を挟むようにして両サイドに手を突いた。
「エッチしたくなっちゃった?」
まるで余裕な表情の高橋さんが、悪戯っぽく小首を傾げて笑いながら私を真上から見つめているので、咄嗟に本心を見透かされたようで恥ずかしくて横を向いた。
そんな私を容赦なく高橋さんが、両頬を右手で挟んで上を向かせた。
「素直な奴だな」
そう言うと、唇に軽くキスをして体を離した。
エッ……。
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