新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
何だか、とても寂しくなってしまった。
もうしてくれないのかな?
ハッ!
嘘……何?
もしかして、私……高橋さんとエッチしたかった?
何を期待して、何でこんなに落胆しているんだろう。
「冗談。 今夜は、しないから安心しろ。 お前、疲れてるから」
高橋さん……。
さっき言ったことを、覚えていたんだ。
でも、本当は疲れてなんかいない。 あの時は、明良さんと仁さんにつき合っていることを話すつもりはないと言われて、残念な気持ちでいっぱいになってしまっていたから。
まさか……私って、高橋さんの言う通り本当にエロいのかな?
「フッ……。 お前、ひょっとして不満? そんな顔してるぞ」
高橋さんが、怪しく微笑んだ。
「な、何を言ってるんですか! そ、そんなこと、あ、あるわけないじゃないですか」
焦ってむきになって否定すればするほど、何だか怪しまれている気がしてならなくて、まともに高橋さんの顔が見られない。
視線を泳がせながら、あちらこちらに目を逸らせてしまう。
「だったら、俺をその気にさせてみろよ」
何をそんな……高橋さん。
一瞬、上半身を少し起こして顔を近づけた高橋さんの目が真剣だったので、体が硬直してしまった。
しかし、それは思い過ごしだったようで、また直ぐに微笑むと優しい目に変わった。
「真に受けるなよ」
「ほぇっ?」
目まぐるしく変わる高橋さんの態度について行かれず、思わず空気の抜けたような声を発してしまった。
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