新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
「フッ……。 お前、やっぱり変な奴」
「酷い。 高橋さんこそ、やっぱり意地悪だって、よーく分かりました」
高橋さんから逸れるように、顔を背けて体勢を横向きにして背を向けた。
すると、後ろで高橋さんも横になったのか、少しだけベッド頭の部分が沈んだ。
はぁ……もう……。
うわっ。
緊張感から少し解き放たれたと思っていた矢先、いきなり後ろから抱きしめられて、驚いたと同時に、身動きが取れなくなっている。
高橋さんの吐息が、右耳にかかる。
「男は、昔から好きな女には何かと意地悪したくなる、も・ん・だ」
好きな女……えっ? 
好きな女って?
あっ……。
高橋さんの方に体を向けさせられると、左耳元で囁かれた。
「お楽しみは、まだとっておく」
ひやっ!
高橋さんに、いきなり左耳をペロッと舐められた。
「さあ、もう寝るぞ」
もう寝るぞって、そんな……。
「高橋さんって、やっぱり意地悪」
「そう! 意地悪貴ちゃんだもーん」
はい?
意地悪貴ちゃんって……。
あまりにも、普段の高橋さんからは想像出来ないギャップに、呆気にとられてしまった。
結局、高橋さんにからかわれたまま、それでも高橋さんの温もりと香りに包まれながら、安心していつの間にか眠りについていた。
そんな夢心地な気分の夜は、あっという間に過ぎて朝になってしまい、混まないうちにプレゼントを買いに行こうと、朝食を食べ終わると慌ただしく直ぐに行動を開始した。
食材は、明良さんと仁さんが調達して来てくれるということだったので、プレゼント選びに専念出来るから有り難い。
高橋さんのマンションからそう遠くない、何度か訪れたことのある雑貨が豊富に揃っているショッピングセンターに程なくして到着した。
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