新そよ風に乗って 〜慕情 vol.1〜
明良さんの説明によると、高いお金を出せば、それなりに面白いものも買えるのかもしれない。 でも、そこを敢えて2000円以内で面白いものを見つけることに意義があるということで、毎年2000円以内と決まっているんだそうだ。
「だって、2000円以内にしないといけないから、なかなか見つけられないかもしれないと思って、みんな必死に探すからね」
領収書を渡してまた席に着くと、テーブルに頬杖を突きながらニッコリ笑って明良さんがこちらを見ていた。
その明良さんの笑顔に、こちらも思わず微笑み返す。
「プレゼントの交換の前に、皆さん。 ちょっと俺、陽子ちゃんに聞きたいことがあるんだよねぇ」
エッ……。
何とも意味深な言い方で、明良さんが高橋さんと私を交互に見た。
な、何?
どうしよう。
まさか……。
明良さんにも、ばれちゃった?
咄嗟に隣に座っている高橋さんを見ると、相変わらずポーカーフェイスで平然としている。
何を聞かれるのか不安で、心臓がバクバクいっている。
「あの、明良さん。 な、何でしょう?」
努めて平静を装いながら、明良さんに問い掛けてみた。
「あのさぁ……。 仁と俺に、なーんか報告することがあるんじゃないのぉ? 貴博もぉ……」
き、きた。
やっぱり明良さんにも、もうばれてしまっている。
どう、応えたらいいのか……。
どこから話せば良いのか、必死に頭の中で話の持って行き方を思い巡らせる。 
しかし、ふと考えてみたら、隣に高橋さんが居ることに今更気づく。
そうだ。
高橋さんに話して貰えば、きっと上手く説明してもらえる。
そう思って、高橋さんの顔を見た。
「ね? 陽子ちゃん。 どうなの?」
「えっ? わ、私?」
明良さんがテーブルの上に両手を置いて伏せながら、その上に顎をのせると、上目遣いに高橋さんと私を交互に何度も視線を往復させている。
ああ。 
どうしよう。
報告って……絶対、気づいている。
何て言えばいいの?
高橋さん。
どうしよう……何とか言って欲しい。
もう1度、助けを求めるようにして高橋さんを見たが、相変わらず平然とお酒を飲んでいるだけで、一向に話してくれる気配もない。
やっぱり、私が言わないといけないの?
深呼吸をして、意を決した。
「あの……」
「ん? なぁに、なぁに?」
明良さんが、身を乗り出すように問い返してくる。
思わず、胸に手を当てた。
「敢えて報告することもない。 お前が思ってる通りだろ?」
エッ……。
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